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安全性
第3相試験及び長期投与試験において間質性肺炎が報告されています。本剤服用中にこのような症状があらわれた場合には、必要に応じ、減量、投与中止等の適切な処置を行ってください。
関節リウマチを対象として国内外で実施された第3相試験(試験開始から3ヵ月時点まで)において、主治医により報告された本剤との因果関係を否定できない間質性肺炎の発現は認められませんでした。長期投与試験*における発現率は0.1%(2/3227例)でした。
潰瘍性大腸炎を対象として国内外で実施された第2相及び第3相試験**において、主治医により報告された本剤との因果関係を否定できない間質性肺疾患の発現は認められませんでした。
発熱、(乾性)咳嗽、息切れ、呼吸困難、発熱等
発熱、咳嗽、呼吸困難等の呼吸器症状に十分に注意し、異常が認められた場合には、速やかに胸部レントゲン検査、胸部CT検査及び血液ガス検査等を実施し、本剤の投与を中止するとともにニューモシスチス肺炎との鑑別診断(β-Dグルカンの測定等)を考慮に入れ適切な処置を行ってください。なお、間質性肺炎の既往歴のある患者には、定期的に問診を行うなど、注意してください。
関節リウマチの第3相試験(試験開始から12ヵ月時点まで)における100人・年あたりの発現率は、本剤5mg1日2回投与群で0.11、10mg1日2回投与群で0.11、長期投与試験では本剤5mg1日2回投与群で0.05、10mg1日2回投与群で0.45でした。
間質性肺炎と判断された症例は、いずれも間質性肺炎との関連が知られている関節リウマチ治療薬(メトトレキサート及び/又はプレドニゾン※、プレドニゾロン、サラゾスルファピリジン)を使用していました。
曝露量あたりの間質性肺炎の発現率(関節リウマチ)
ゼルヤンツ適正使用ガイド(2021年10月作成)
本剤の投与中に、総コレステロール、LDLコレステロール及びHDLコレステロールの増加等の脂質検査値異常があらわれることがあります。
心血管系事象のリスク因子(喫煙、高血圧、糖尿病、冠動脈疾患の既往等)を1つ以上有する50歳以上の関節リウマチ患者を対象にTNF阻害剤群と本剤5mg1日2回群及び本剤10mg1日2回群の安全性の比較を目的とした海外臨床試験(A3921133試験)において、副次評価項目である臨床検査値の変動のうち、総コレステロール、LDLコレステロール、HDLコレステロールの増加が認められました。
関節リウマチを対象として国内外で実施された第3相試験(試験開始から3ヵ月時点まで)において、主治医により報告された本剤との因果関係を否定できないLDLコレステロール増加、HDLコレステロール変動及び血中コレステロール増加の発現率は各々0.2%(6/2430例)、0.2% (4/2430例)、0.4%(10/2430例)でした。長期投与試験*における発現率は各々0.6%(19/3227例)、0.1%未満(1/3227例)、0.8%(26/3227例)でした。
潰瘍性大腸炎を対象として国内外で実施された第2相及び第3相試験**において、主治医により報告された本剤との因果関係を否定できないLDLコレステロール増加、HDLコレステロール増加、HDLコレステロール低下及び血中コレステロール増加の発現率は各々0.87%(10/1156例)、0.26%(3/1156例)、0.09%(1/1156例)、2.08%(24/1156例)でした。
本剤投与開始後は定期的に脂質検査値を確認してください。
臨床上必要と認められた場合には、高脂血症治療薬の投与等の適切な処置を考慮してください。
本剤投与中のアトルバスタチンの脂質への影響を検討した臨床試験において、関節リウマチ患者にアトルバスタチンを投与した結果、プラセボ投与群と比較して有意なLDLコレステロールの減少が認められています(p<0.0001)。
関節リウマチにおけるLDLコレステロール及びHDLコレステロールへの本剤の影響を検討するため、第3相試験におけるベースラインから投与12ヵ月後の変動について検討しました。本剤投与開始後1ヵ月時点までにLDL及びHDLコレステロールの増加がみられ、それ以降の変動はわずかでした。12ヵ月時点におけるLDLコレステロールのベースラインからの変化率は本剤5mg1日2回投与群で14.2%、10mg1日2回投与群で19.7%、HDLコレステロールのベースラインからの変化率は本剤5mg1日2回投与群で15.5%、10mg1日2回投与群で17.6%でした。 LDL/HDL比の大きな変動は認められませんでした。
LDLコレステロールのベースラインからの平均変化率:第3相試験(投与開始~12ヵ月時点)(関節リウマチ)
HDLコレステロールのベースラインからの平均変化率:第3相試験(投与開始~12ヵ月時点)(関節リウマチ)
関節リウマチの長期投与試験における60ヵ月間の、総コレステロールのベースライン§からの変動について検討しました。
本剤投与により総コレステロールの増加がみられました1、2)。
総コレステロールのベースラインからの平均変化量1、2):長期投与試験*(関節リウマチ)
総コレステロールの平均値の推移
LDLコレステロールのベースラインからの平均変化率
総括報告書サインオフ:2021 年6月1日
※2019 年の試験デザイン変更により5mg1日2回群に切り替えられた被験者を含む
HDLコレステロールのベースラインからの平均変化率
総括報告書サインオフ:2021 年6月1日
※2019 年の試験デザイン変更により5mg1日2回群に切り替えられた被験者を含む
LDL/HDL比のベースラインからの平均変化率
総括報告書サインオフ:2021 年6月1日
※2019 年の試験デザイン変更により5mg1日2回群に切り替えられた被験者を含む
ゼルヤンツ適正使用ガイド(2021年10月作成)
心血管系事象のリスク因子(喫煙、高血圧、糖尿病、冠動脈疾患の既往等)を1つ以上有する50歳以上の関節リウマチ患者を対象にTNF 阻害剤群と本剤5mg 1日2回群及び本剤10mg 1日2回群の安全性の比較を目的とした海外臨床試験(A3921133試験)において、主要評価項目であった主要な心血管系事象(MACE)のTNF阻害剤群に対する非劣性は、検証できませんでした。また副次評価項目であった心筋梗塞の発現について、TNF 阻害剤群と比較し本剤投与群において増加が認められました。
関節リウマチを対象として国内外で実施された第3相試験(試験開始から3ヵ月時点まで)において、主治医により報告された本剤との因果関係を否定できない心血管系障害発現率は心臓障害として0.3% (8/2430例)、血管障害として1.2%(30/2430例)、さらに血管障害のうち高血圧は0.9%(21/2430例)でした。長期投与試験*における発現率は心臓障害1.1%(36/3227例)、血管障害2.2%(70/3227例)、血管障害のうち高血圧は1.7%(56/3227例)でした。
潰瘍性大腸炎を対象として国内外で実施された第2相及び第3相試験**において、主治医により報告された本剤との因果関係を否定できない心血管系障害発現率は心臓障害として1.1%(13/1156例)、血管障害として1.9%(22/1156例)、さらに血管障害のうち高血圧は0.95%(11/1156例)でした。
MACE*の発現率(投与終了後60日まで)
総括報告書サインオフ:2021 年6月1日
※2019 年の試験デザイン変更により5 ㎎ 1日2回投与群に切り替えられた被験者を含む
MACEのハザード比
コックス比例ハザードモデルに基づく。
TNF阻害剤群に対するトファシチニブ併合群(5mg1日2回群+10mg1日2回群)の主要比較の結果、ハザード比の95% 信頼区間上限が1.8を超えた(1.94>1.8)ため、あらかじめ設定した非劣性基準を満たさなかった。
トファシチニブ5mg 1日2回群およびトファシチニブ10mg1日2回群の副次比較の結果、ハザード比の95%信頼区間上限が2.0を超えなかった(1.71<2.0)ため、あらかじめ設定した非劣性基準を満たした。
総括報告書サインオフ:2021 年6月1日
※2019 年の試験デザイン変更により5 ㎎ 1日2回投与群に切り替えられた被験者を含む
* A3921133試験における主要な心血管系事象(MACE)の定義は以下のとおりです。
心血管死
急性心筋梗塞による死亡
心突然死
心不全による死亡
脳血管障害による死亡
心血管手技に伴う死亡
心血管出血による死亡
上記以外の心血管系を原因とする死亡(末梢動脈疾患など)
非致死的心筋梗塞
非致死的脳血管障害(虚血や出血を示す新規脳病変が画像診断によって認められるような可逆的な限局性神経障害を含む)
MACE(項目別)の発現率(投与終了後60日まで)
総括報告書サインオフ:2021 年6月1日
※2019 年の試験デザイン変更により5mg1日2回群に切り替えられた被験者を含む
関節リウマチの第3相試験における心血管系有害事象の発現率は、プラセボ群と比較して大きな差は認められませんでした。長期投与試験3)*における発現率の上昇は認められませんでした。
心血管系有害事象の発現率(曝露量あたり)(関節リウマチ)
ゼルヤンツ適正使用ガイド(2021年10月作成)
本剤の投与中に、悪性リンパ腫、固形癌等の悪性腫瘍が発現することがあります。
心血管系事象のリスク因子(喫煙、高血圧、糖尿病、冠動脈疾患の既往等)を1つ以上有する50歳以上の関節リウマチ患者を対象にTNF 阻害剤群と本剤5mg 1日2回群及び本剤10mg 1日2回群の安全性の比較を目的とした海外臨床試験(A3921133試験)において主要評価項目であった悪性腫瘍(非黒色腫皮膚癌を除く)のTNF 阻害剤群に対する非劣性は、検証できませんでした。また副次評価項目であった非黒色腫皮膚癌(皮膚扁平上皮癌を含む)の発現について、TNF 阻害剤群と比較し、本剤投与群において増加が認められました。
関節リウマチの第1相試験、第2相試験、第3相試験及び長期投与試験*全体1)において、本剤の投与を受けた被験者6194例のうち173例に悪性腫瘍(非黒色腫皮膚癌:NMSCを除く)の発現が認められました。発現例数の多かった悪性腫瘍は、肺癌32例、乳癌25例、リンパ腫19例でした。
最長2年間の第3相試験6試験2)において、本剤5mg1日2回を1587例(1464.2人・年)、10mg1日2回を1609例( 1501.0人・年)、プラセボを681例(202.7人・年)に投与した結果、プラセボ群では悪性腫瘍(NMSCを除く)の発現は認められませんでしたが、本剤5mg1日2回投与群では8例、10mg1日2回投与群では13 例に発現しました。本剤投与中の悪性腫瘍の発現率(/100 人・年)は、5mg1日2回投与群で0.55(95%信頼区間:0.27, 1.09)、10mg1日2回投与群で0.87(95% 信頼区間:0.50, 1.49)でした。
潰瘍性大腸炎を対象とした臨床プログラムでは、9 例(9 件)の悪性腫瘍が報告されています(NMSCを除く)。9例すべてが長期投与A3921139試験で認められ、全例がコホート3(第2相、第3相試験及び長期投与試験**)で主要用量として10mg1日2回投与群の被験者でした。特定の癌腫に偏った発現はありませんでした。この9例での発現率は100人・年あたり0.64(9/1123例、95%信頼区間0.29, 1.21)でした。
この9例のうち、肝血管肉腫を発現した症例は本剤投与終了後41日後に、腎細胞がんを発現した症例は本剤投与終了後38日後に報告されており、これら2 例を除いた主要解析集団での発現率は100 人・年あたり0.50(7/1123 例、95%信頼区間0.20, 1.02)でした。また結腸直腸癌を発現した症例は、寛解導入試験でプラセボ群であり、プラセボ投与を受けている8 週時の検査にて盲腸に高度異形成が認められました。本症例は、寛解導入試験で臨床的奏効が得られなかったため、引き続き長期投与試験に移行し、本剤10mg1日2回の投与を受けました。本剤投与開始57日目に結腸切除が施行され、この検体より盲腸の高度異形成の部位に結腸腺癌が認められました。以上の臨床経過から本剤投与開始前から結腸腺癌を発現していた可能性が高いですが、本剤投与中に診断されたことから発現率に含めています。なお本症例を除いた6例での悪性腫瘍発現率は、100人・年あたり0.43(6/1123例、95%信頼区間0.16, 0.93)でした。
なお、コホート3(第2 相、第3 相試験及び長期投与試験**)の2016 年7月8日までのデータカットオフにおいて、日本人集団での悪性腫瘍はNMSCを含めて認められていません。なおこのデータカットオフ以降、A3921139 試験で1 例に結腸ポリープが報告されましたが、病理組織審査委員会により良性腫瘍と確認されました。
悪性腫瘍(非黒色腫皮膚癌を除く)の発現率(全期間)
総括報告書サインオフ:2021 年6月1日
※2019 年の試験デザイン変更により5 ㎎ 1日2回投与群に切り替えられた被験者を含む
悪性腫瘍(非黒色腫皮膚癌を除く)のハザード比
コックス比例ハザードモデルに基づく。
TNF 阻害剤群に対するトファシチニブ併合群(5mg1日2回群+10mg1日2回群)の主要比較の結果、ハザード比の95%信頼区間上限が1.8を超えた(2.09>1.8)ため、あらかじめ設定した非劣性基準を満たさなかった。
トファシチニブ5mg1日2回群およびトファシチニブ10mg1日2回群の副次比較の結果、ハザード比の95%信頼区間上限が2.0を超えなかった(1.43<2.0)ため、あらかじめ設定した非劣性基準を満たした。
総括報告書サインオフ:2021 年6月1日
※2019 年の試験デザイン変更により5 ㎎ 1日2回投与群に切り替えられた被験者を含む
癌種別の発現率(全期間)
総括報告書サインオフ:2021 年6月1日
※2019 年の試験デザイン変更により5mg1日2回群に切り替えられた被験者を含む
非黒色腫皮膚癌(皮膚扁平上皮癌を含む)の発現率(投与終了後28日まで)
総括報告書サインオフ:2021 年6月1日
※2019 年の試験デザイン変更により5mg1日2回群に切り替えられた被験者を含む
本剤投与中に全身倦怠感、発熱、胸水、胃部不快感等が認められた場合には、原疾患(関節リウマチ又は潰瘍性大腸炎)による全身症状並びに感染症、胃潰瘍等の他、悪性腫瘍も念頭においた鑑別診断を行ってください。腫瘍の発見に先行して胸水が認められた症例も報告されています。
関節リウマチを対象とした本剤の、投与量別の悪性腫瘍(NMSCを除く)の発現率及び、投与期間別の発現率は以下のとおりでした4)。
投与量別の悪性腫瘍(NMSCを除く)の発現率4):第1相、第2相、第3相、長期投与試験*(関節リウマチ)
投与期間別の悪性腫瘍(NMSCを除く)の発現率4):第1相、第2相、第3相、長期投与試験*(関節リウマチ)
【肺癌】
関節リウマチの第1相試験、第2相試験、第3相試験及び長期投与試験全体*において、肺癌が32例に認められました。本剤投与中の肺癌の発現率(/100人・年)は、0.2(95%信頼区間:0.1,0.2)でした。
【乳癌】
関節リウマチの第1相試験、第2相試験、第3相試験及び長期投与試験全体*において、乳癌が25例に認められました。本剤投与中の乳癌の発現率(/100人・年)は、0.2(95%信頼区間:0.1,0.2)でした。
【悪性リンパ腫】
関節リウマチの第1相試験、第2相試験、第3相試験及び長期投与試験全体*において、悪性リンパ腫が19例に認められました。本剤投与中の悪性リンパ腫の発現率(/100人・年)は、0.1(95%信頼区間:0.1,0.2)でした。
外国で実施された腎移植患者を対象とした臨床試験において、複数の免疫抑制剤併用下で、シクロスポリンを投与した群のリンパ腫の発現率は0%(0/111例)であるのに対して、本剤を投与した群でEBウイルス関連のリンパ腫の発現率は2.3%(5/218例、非ホジキンリンパ腫4例、ホジキンリンパ腫1例)でした。
【非黒色腫皮膚癌:NMSC】
関節リウマチの第1相試験、第2相試験、第3相試験及び長期投与試験全体*において、NMSCが118例に認められました。本剤投与中のNMSCの発現率(/100人・年)は、0.6(95%信頼区間:0.5,0.7)でした。 投与量別の発現率は、5mg1日2回投与群0.5(95%信頼区間:0.4,0.7)、10mg1日2回投与群0.7 (95%信頼区間:0.5,0.8)でした。
ゼルヤンツを投与された患者において、NMSCの発現が報告されています。 皮膚癌のリスクの高い患者には、定期的な皮膚検査を実施してください。
【日本人関節リウマチ患者における悪性腫瘍発現率】
関節リウマチを対象とした第2相試験、第3相試験及び長期投与試験全体*において、556例(1705人・年)中22例で悪性腫瘍(NMSCを除く)の発現が認められました。発現例数の多かった悪性腫瘍は、胃癌5例、乳癌3例、肺癌3例でした。リンパ腫は2例に認められました。その他、同一症例における多重癌(甲状腺癌、食道癌、大腸癌)が1例認められました。
また、本剤投与1294日後に、長期投与試験の日本人患者1例でNMSC(メルケル細胞癌)が認められました。本剤投与中の悪性腫瘍(NMSCを除く)の発現率(/100人・年)は、1.29(95%信頼区間:0.81,1.96)でした。
日本人関節リウマチ患者における悪性腫瘍発現状況6、7):第2相、第3相、長期投与試験*(関節リウマチ)
関節リウマチに対する本剤の投与期間別の発現率は以下のとおりでした。6-12、12-18ヵ月において、発現率は高い傾向でした6、7)。
投与期間別の日本人における悪性腫瘍の発現率6、7):第2相、第3相、長期投与試験*(関節リウマチ)
ゼルヤンツ適正使用ガイド(2021年10月作成)
B型肝炎及びC型肝炎のウイルスキャリアの患者は本剤の臨床試験の対象患者から除外されていました。そのため、B型肝炎ウイルスの再活性化に対する本剤の影響は明らかではありませんが、生物学的製剤を投与されたB型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者(HBs抗原陰性、かつHBc抗体又はHBs抗体陽性)において、B型肝炎ウイルスの再活性化が報告されています。
B型肝炎ウイルスキャリアの患者又は既往感染者に本剤を投与する場合は、肝機能検査値や肝炎ウイルスマーカーのモニタリングを行うなど、B型肝炎ウイルスの再活性化の徴候や症状の発現に注意してください。
なお、本剤投与時には、日本リウマチ学会による「B型肝炎ウイルス感染リウマチ性疾患患者への免疫抑制療法に関する提言8)」及び日本肝臓学会による「B型肝炎治療ガイドライン9)」を参考にするとともに、肝臓専門医等に相談のうえ適切な処置を行ってください。
免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドライン9)
補足: | 血液悪性疾患に対する強力な化学療法中あるいは終了後に、HBs抗原陽性あるいはHBs抗原陰性例の一部においてHBV再活性化によりB型肝炎が発症し、その中には劇症化する症例があり、注意が必要である。また、血液悪性疾患または固形癌に対する通常の化学療法およびリウマチ性疾患・膠原病などの自己免疫疾患に対する免疫抑制療法においてもHBV再活性化のリスクを考慮して対応する必要がある。通常の化学療法および免疫抑制療法においては、HBV再活性化、肝炎の発症、劇症化の頻度は明らかでなく、ガイドラインに関するエビデンスは十分ではない。また、核酸アナログ投与による劇症化予防効果を完全に保証するものではない。 | |||
注1) | 免疫抑制・化学療法前に、HBVキャリアおよび既往感染者をスクリーニングする。HBs抗原、HBc抗体およびHBs抗体を測定し、HBs抗原が陽性のキャリアか、HBs抗原が陰性でHBs抗体、HBc抗体のいずれか、あるいは両者が陽性の既往感染かを判断する。HBs 抗原・HBc 抗体およびHBs 抗体の測定は、高感度の測定法を用いて検査することが望ましい。また、HBs 抗体単独陽性(HBs 抗原陰性かつHBc 抗体陰性)例においても、HBV 再活性化は報告されており、ワクチン接種歴が明らかである場合を除き、ガイドラインに従った対応が望ましい。 | |||
注2) | HBs抗原陽性例は肝臓専門医にコンサルトすること。また、すべての症例において核酸アナログの投与開始ならびに終了にあたって肝臓専門医にコンサルトするのが望ましい。 | |||
注3) | 初回化学療法開始時にHBc抗体、HBs抗体未測定の再治療例および既に免疫抑制療法が開始されている例では、抗体価が低下している場合があり、HBV DNA定量検査などによる精査が望ましい。 | |||
注4) | 既往感染者の場合は、リアルタイムPCR法によりHBV DNAをスクリーニングする。 | |||
注5) | a. | リツキシマブ・オビヌツズマブ(±ステロイド)、フルダラビンを用いる化学療法および造血幹細胞移植:既往感染者からのHBV再活性化の高リスクであり、注意が必要である。治療中および治療終了後少なくとも12か月の間、HBV DNAを月1回モニタリングする。造血幹細胞移植例は、移植後長期間のモニタリングが必要である。 | ||
b. | 通常の化学療法および免疫作用を有する分子標的治療薬を併用する場合:頻度は少ないながら、HBV再活性化のリスクがある。HBV DNA量のモニタリングは1~3か月ごとを目安とし、治療内容を考慮して間隔および期間を検討する。血液悪性疾患においては慎重な対応が望ましい。 | |||
c. | 副腎皮質ステロイド薬、免疫抑制薬、免疫抑制作用あるいは免疫修飾作用を有する分子標的治療薬による免疫抑制療法:HBV再活性化のリスクがある。免疫抑制療法では、治療開始後および治療内容の変更後(中止を含む)少なくとも6か月間は、月1回のHBV DNA量のモニタリングが望ましい。なお、6か月以降は3か月ごとのHBV DNA量測定を推奨するが、治療内容に応じて迅速診断に対応可能な高感度HBs抗原測定(感度 0.005IU/mL)あるいは高感度HBコア関連抗原測定(感度 2.1 log U/mL)で代用することは可能である。 | |||
注6) | 免疫抑制・化学療法を開始する前、できるだけ早期に核酸アナログ投与を開始する。ことに、ウイルス量が多いHBs抗原陽性例においては、核酸アナログ予防投与中であっても劇症肝炎による死亡例が報告されており、免疫抑制・化学療法を開始する前にウイルス量を低下させておくことが望ましい。 | |||
注7) | 免疫抑制・化学療法中あるいは治療終了後に、HBV DNA量が20IU/mL(1.3LogIU/mL)以上になった時点で直ちに核酸アナログ投与を開始する(20IU/mL未満陽性の場合は、別のポイントでの再検査を推奨する)。また、高感度HBs抗原モニタリングにおいて1IU/mL未満陽性(低値陽性)あるいは高感度HBコア関連抗原陽性の場合は、HBV DNAを追加測定して20IU/mL以上であることを確認した上で核酸アナログ投与を開始する。免疫抑制・化学療法中の場合、免疫抑制薬や免疫抑制作用のある抗腫瘍薬は直ちに投与を中止するのではなく、対応を肝臓専門医と相談する。 | |||
注8) | 核酸アナログは薬剤耐性の少ないETV、TDF、TAFの使用を推奨する。 | |||
注9) | 下記の①か②の条件を満たす場合には核酸アナログ投与の終了が可能であるが、その決定については肝臓専門医と相談した上で行う。 ①スクリーニング時にHBs抗原陽性だった症例では、B型慢性肝炎における核酸アナログ投与終了基準を満たしていること。 ②スクリーニング時にHBc抗体陽性またはHBs抗体陽性だった症例では、 (1)免疫抑制・化学療法終了後、少なくとも12か月間は投与を継続すること。 (2)この継続期間中にALT(GPT)が正常化していること(ただしHBV以外にALT異常の原因がある場合は除く)。 (3)この継続期間中にHBV DNAが持続陰性化していること。 (4)HBs抗原およびHBコア関連抗原も持続陰性化することが望ましい。 |
|||
注10) | 核酸アナログ投与終了後少なくとも12か月間は、HBV DNAモニタリングを含めて厳重に経過観察する。経過観察方法は各核酸アナログの使用上の注意に基づく。経過観察中にHBV DNA量が20IU/mL(1.3LogIU/mL)以上になった時点で直ちに投与を再開する。 |
本剤は、その作用機序からJAK/STATシグナル伝達を阻害することにより、クレアチンホスホキナーゼ (CPK)の軽度上昇をもたらす可能性があります10、11、12)。
本剤との因果関係は明らかではありませんが、本剤の投与中にCPK増加、ミオパチー及び横紋筋融解症の発現が報告されています。
関節リウマチを対象として国内外で実施された第3相試験(試験開始から3ヵ月時点まで)において、主治医により報告された本剤との因果関係を否定できないCPK増加の発現率は1.1% (26/2430例)、長期投与試験*における発現率は0.9%(28/3227例)でした。
また、第3相試験の2例に横紋筋融解症が、長期投与試験**の1例にミオパチーが認められています。
潰瘍性大腸炎を対象として国内外で実施された第3相試験***において、主治医により報告された本剤との因果関係を否定できないCPK増加の発現率は6.7%(77/1156例)でした。本剤を投与した被験者で横紋筋融解症及びミオパチーの報告はありませんでした。
本剤投与開始後は、定期的に臨床症状(四肢の脱力感、腫脹、しびれ、痛み、赤褐色尿[ミオグロビン尿]など)及び臨床検査値(カリウムやミオグロビン、CPK等の筋逸脱酵素の急激な上昇など) を確認してください。
関節リウマチを対象とした第3相試験では、投与開始から3ヵ月時までにCPK増加が認められた被験者の割合は、プラセボ群0.4%(3/681例)に対し、本剤5mg1日2回投与群で0.7%(9/1216例)、10mg1日2回投与群で2.1%(26/1214例)でした。3ヵ月時以降もこれらの割合は増加せず、3ヵ月時から6ヵ月時までの割合は本剤5mg1日2回投与群で0.6%(8/1451例)、10mg1日2回投与群で0.9%(13/1439例)、6ヵ月時以降は本剤5mg1日2回投与群で0.8%(8/1056例)、10mg1日2回投与群で1.1%(11/1046例)でした。第3相試験で認められたCPK増加はいずれも軽度から中等度でした。
第3相試験の投与開始から3ヵ月時、3ヵ月時から6ヵ月時、6ヵ月時以降におけるCPK増加の曝露量あたりの発現率は、本剤5mg1日2回投与群でそれぞれ3.13/100人・年(0.7%、9/1216例)、2.50/100人・年(0.6%、8/1451例)、1.82/100人・年(0.8%、8/1056例)、また10mg1日2回投与群では9.01/100人・年(2.1%、26/1214例)、4.13/100人・年(0.9%、13/1439例)、2.51/100人・年(1.1%、11/1046例)であり、CPK増加の発現率に経時的な上昇は認められませんでした。
長期投与試験*では、本剤5mg1日2回投与群で2.0%(27/1321例)、10mg1日2回投与群で1.0%(19/1906例)であり、曝露量あたりの発現率は5mg1日2回投与群で1.21/100人・年(2.0%、27/1321)、10mg1日2回投与群で2.18/100人・年(1.0%、19/1906例)でした。これらの発現率は、第3相試験の6ヵ月時以降の発現率と同程度でした。長期投与試験*で認められたCPK増加はいずれも軽度又は中等度でした。
また、第3相試験の2例に横紋筋融解症が、1例に血中ミオグロビン増加が認められました。このうち横紋筋融解症の2例が因果関係を否定できない副作用として報告されています。
長期投与試験**では、2例に横紋筋融解症が、ミオパチー及び中毒性ミオパチーがそれぞれ1例認められました。このうちのミオパチーの1例が因果関係を否定できない副作用として報告されています。
ゼルヤンツ適正使用ガイド(2021年10月作成)
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