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警告・禁忌を含む注意事項等情報は最新のDI情報をご参照ください。
一部承認内容と異なる用法及び用量を含んだ試験成績又は解析結果が含まれていますが、ここに記載されている試験は承認時評価資料のために記載します。
*効能又は効果:再発又は難治性の多発性骨髄腫(標準的な治療が困難な場合に限る)
開催日 2024年5月25日
会場 ANAインターコンチネンタルホテル東京 B1F「プロミネンス」
京都府立医科大学大学院医学研究科 血液内科学 教授
黒田 純也先生
2024年5月22日、多発性骨髄腫治療薬で初となる抗B細胞成熟抗原(BCMA)/CD3二重特異性抗体のエルレフィオが、「再発又は難治性の多発性骨髄腫(標準的な治療が困難な場合に限る)」の適応で薬価基準に収載された。本講演では、エルレフィオのRRMM患者における有効性と安全性がBCMA標的治療歴の有無別に考察され、エルレフィオが適する患者像についてもご講演いただいた。
MagnetisMM-3試験は、免疫調節薬(IMiD)、プロテアソーム阻害剤(PI)及び抗CD38モノクローナル抗体製剤(抗CD38抗体)のそれぞれ少なくとも1剤に対して治療抵抗性を示す(前治療のレジメン数を問わない)RRMM患者を対象として、エルレフィオを単剤投与したときの有効性及び安全性を検討することを目的に実施された国際共同第Ⅱ相試験です。BCMA標的治療歴のないRRMM患者を対象としたコホートAにおいて、独立中央判定(BICR)評価による奏効率(ORR)は61.0%であり、そのうち最良部分奏効(VGPR)以上は55.3%でした。また完全奏効(CR)以上は27.6%でした(図1)。一方で、患者背景別にORRをみてみると、髄外病変(EMD)を有する患者では38.5%、R-ISS3の患者では26.3%、5剤の治療に対する抵抗性を有する患者では46.2%であり、ORRに差異が認められる点は、実臨床の場でも念頭に置いておく必要があります。しかしながら、厳格な完全奏効(sCR)又はCRを達成した34例で、検体が評価可能であった22例における微小残存病変(MRD)陰性率が90.9%であり(図2)、エルレフィオの有効性を評価するうえでは興味深い結果と考えます。
一方のBCMA標的治療歴のあるRRMM患者を対象としたコホートBにおけるBICR評価によるORRは34.4%でした(図3)。また、BICR評価による無増悪生存期間(PFS)の中央値は3.5ヵ月、Kaplan-Meier法を用いた9ヵ月時点でのイベントフリー確率は35.0%でした(図4)。以上の結果は、キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞療法といった他のBCMA標的治療後であっても、エルレフィオを治療選択肢の1つとして検討する上で重要な結果と考えます。
なお、安全性に関しては、主な副作用として、サイトカイン放出症候群(CRS)(57.9%)、好中球減少症(36.1%)、貧血(26.8%)などが認められており(表)、特にCRSに関しては起こりうるものとして、適正に対応していくことが重要と考えられます。
安定(SD)は17.1%、疾患進行(PD)は17.9%、推定不能(NE)は4.1%であった。
抗腫瘍効果の評価は国際骨髄腫ワーキンググループ(IMWG)規準1)に基づく。
*Clopper-Pearson法
**完全奏効率(CRR:sCR+CR)(副次評価項目)
(データカットオフ日:2022年10月14日)
社内資料:国際共同第Ⅱ相試験(C1071003試験)(承認時評価資料)
*MRDは腫瘍評価時に採取された骨髄検体より、次世代シークエンサー(NGS)を用いて検出感度10-5で中央検査機関で評価した。
†Clopper-Pearson法
(データカットオフ日:2022年10月14日)
社内資料:国際共同第Ⅱ相試験(C1071003試験)(承認時評価資料)
sCRは0%であった。SDは26.6%、PDは28.1%、NEは10.9%であった。
抗腫瘍効果の評価は国際骨髄腫ワーキンググループ(IMWG)規準1)に基づく。
*Clopper-Pearson法
**完全奏効率(CRR:sCR+CR)(副次評価項目)
(データカットオフ日:2022年10月14日)
社内資料:国際共同第Ⅱ相試験(C1071003試験)(承認時評価資料)
(データカットオフ日:2022年10月14日)
社内資料:国際共同第Ⅱ相試験(C1071003試験)(承認時評価資料)
GradeはNCI-CTCAE Version 5.0に準じる。CRSのGradeはASTCT 20192)に準じて評価した。
(データカットオフ日:2022年10月14日)
183例※1中167例(91.3%)に副作用が認められ、その主な副作用はCRS106例(57.9%)、好中球減少症66例(36.1%)、貧血49例(26.8%)、リンパ球減少症43例(23.5%)、注射部位反応39例(21.3%)等であった。
重篤な副作用は183例中54例(29.5%)に認められ、内訳はCRS23例(12.6%)、肺炎6例(3.3%)、貧血5例(2.7%)、発熱性好中球減少症4例(2.2%)、発熱、ニューモシスチス・イロベチイ肺炎各3例(1.6%)、好中球減少症、血小板減少症、副鼻腔炎、細菌性肺炎、腎盂腎炎、免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群(ICANS)各2例(1.1%)、純赤血球無形成、狭心症、急性心不全、めまい、出血性下痢、注射部位反応、低γグロブリン血症、蜂巣炎、敗血症、サイトメガロウイルス感染再燃、器具関連菌血症、大腸菌尿路感染症、ヘルペスウイルス感染症、クレブシエラ性敗血症、パルボウイルスB19感染、サイトメガロウイルス性肺炎、シュードモナス性肺炎、ウイルス性肺炎、敗血症性ショック、ブドウ球菌性菌血症、ブドウ球菌性敗血症、溶連菌性敗血症、成長障害、低カリウム血症、腫瘍崩壊症候群、関節痛、骨痛、筋炎、リウマチ性多発筋痛、サルコペニア、運動失調、ギラン・バレー症候群、錯乱状態、急性腎障害、呼吸困難、低酸素症、肺臓炎が各1例(0.5%)であった。
死亡に至った副作用はシュードモナス性肺炎、成長障害、敗血症性ショック各1例(0.5%)であった。
投与中止に至った副作用は15例(8.2%)であり、内訳はICANS2例(1.1%)、好中球減少症、血小板減少症、発熱性好中球減少症、CRS、サイトメガロウイルス感染再燃、クレブシエラ性敗血症、サイトメガロウイルス性肺炎、シュードモナス性肺炎、敗血症、敗血症性ショック、血中アルカリホスファターゼ増加、γ-グルタミルトランスフェラーゼ増加、筋肉減少症、ギラン・バレー症候群、末梢性運動ニューロパチー、末梢性感覚運動ニューロパチー、末梢性感覚ニューロパチー、多発ニューロパチー、呼吸困難、気道の炎症が各1例(0.5%)であった。
社内資料:国際共同第Ⅱ相試験(C1071003試験)(承認時評価資料)
※1:エルレフィオの投与を少なくとも1回受けたすべての治験参加者187例のうち、エルレフィオ44mg投与後に76mgの週1回投与を受けたコホートAの4例を除いた患者
エルレフィオをどのような症例に使用すべきかについては、「CAR-T細胞療法の適応があるか否か」が1つの指標であると私自身考えています。例えば、京都府立医科大学病院では「75歳以下」、「臓器障害の状態」、「75歳以下かつ、CAR-T細胞療法実施までの時間的猶予」などをCAR-T細胞療法導入の判断基準としています。そのため、エルレフィオはこれらに該当しない症例への投与をまず考え、それ以外にもブリッジング療法としての使用や、上記にお示ししたMagnetisMM-3試験にもあるようにCAR-T細胞療法後の治療選択肢の1つとしても考慮されるのではないでしょうか。
本試験の主要評価項目である奏効率(ORR)は、治験実施計画書で規定された最終解析である2022年6月17日時点でコホートA[BCMA標的治療歴なし]は61.0%(95%信頼区間:51.8-69.6)であり、帰無仮説(閾値ORR 30%以下)に対して統計的に有意だった(p<0.0001、片側正確二項検定)♯。また、コホートB[BCMA標的治療歴あり]は29.7%(95%信頼区間:18.9-42.4)であり、帰無仮説(閾値ORR 15%以下)に対して統計的に有意だった(p=0.0021、片側正確二項検定)♯。いずれのコホートに関しても帰無仮説が棄却され、真のORRが閾値ORRを上回ることが示された。
本試験の主要評価項目であるORR及びその他の有効性の結果並びに安全性の結果について、ORRの最終解析時より長い追跡データである承認申請時の結果[最後の患者の初回投与から9ヵ月以上経過した時点(データカットオフ日:2022年10月14日)]を示す。本試験は継続中である。追跡期間の中央値はデータカットオフ時点(2022年10月14日)で、コホートA[BCMA標的治療歴なし]で10.38ヵ月(範囲:0.23-20.14ヵ月)、コホートB[BCMA標的治療歴あり]で9.22ヵ月(範囲:0.33-12.32ヵ月)であった。
♯本試験は、統計的に第1種の過誤、第2種の過誤を制御した解析として計画されたが、同時対照群の比較試験でないため、検定結果は検証的なものではない。
目 的:
IMiD、PI及び抗CD38抗体のそれぞれ少なくとも1剤に対して治療抵抗性を示すRRMM患者を対象として、エルレフィオを単剤投与したときの有効性及び安全性を検討する。
試験デザイン:
非無作為化、非盲検、多施設国際共同、第Ⅱ相試験
対 象:
BCMAを標的とした治療がエルレフィオ単剤投与の効果に及ぼす影響を検討するため、2つの独立した並行コホートを設定した。
※2:123例にはエルレフィオ44mg投与後に76mgの週1回投与を受けた4例が含まれる。
試験方法:
エルレフィオを1日目に12mg、4日目に32mgを1日1回皮下投与し、8日目以降は4週間を1サイクルとして1日1回76mg(標準用量)を1週間間隔で皮下投与した。ステップアップ用量及び初回の標準用量の投与約60分前に前投与[アセトアミノフェン650mg(又はparacetamol※3 500mg)を経口、デキサメタゾン20mg(又は相当量)を経口又は静注及びジフェンヒドラミン25mg(又は相当量)を経口又は静注]を必須とした。少なくとも24週間(6サイクル)投与継続後に部分奏効(PR)以上の効果が2ヵ月以上持続している場合、投与間隔を2週間間隔に変更した。投与間隔を2週間間隔に変更後に腫瘍量の増加(IMWG規準に従ってPDと判定するには至らない増加)が認められた場合は、投与間隔を1週間間隔に戻すこととした。エルレフィオの投与はPDの確定、許容できない毒性の発現、同意の撤回又は試験終了まで行うこととした。なお、プロトコルに2段階のステップアップ用量を導入する前にコホートAに組み入れられた最初の4例は、初回に44mg、8日目から76mgの週1回投与を受けた。
※3:paracetamolは国内未承認
評価項目:
[有効性]主要評価項目<コホートA及びコホートB>:BICR評価によるIMWG規準に従ったORR(sCR+CR+VGPR+PR)
重要な副次評価項目<コホートAのみ>:ベースライン時のEMDの有無別のBICR評価によるIMWG規準に従ったORR
副次評価項目<コホートA及びコホートB>:IMWG規準に従ったMRD陰性率、BICR評価によるIMWG規準に従ったPFS、IMWG規準に従ったCRRなど
[安全性]有害事象をNCI-CTCAE Version 5.0を用いて評価し、CRS及びICANSのGradeはASTCT 20192)に準じて評価した。
有効性評価及び安全性評価※4は治験薬の投与を少なくとも1回受けたすべての治験参加者187例を対象に行った。
※4:安全性の集計結果については、エルレフィオ44mgの投与後に76mgの週1回投与を受けたコホートAの4例を除いた183例を示す。
解析計画:
●コホートA及びコホートBの目標症例数は、正確二項分布に基づく2段階デザインを用いて、2つのコホートで別々に主要評価項目であるORR(BICR評価)に関する統計学的仮説を検定したとき十分な検出力が得られるように設定した。●主要評価項目であるORR(BICR評価)の各コホートの最終解析は、すべての対象症例がベースライン以降に少なくとも2回奏効評価を行った時点、又は投与開始後2ヵ月以内に奏効評価を中止した時点で実施することとした。●主要評価項目であるORR(BICR評価)はClopper-Pearson法により両側95%信頼区間を算出し、コホートAでは、閾値ORR30%以下となる帰無仮説に対する片側p値、コホートBでは、閾値ORR15%以下となる帰無仮説に対する片側p値を算出した。さらにVGPR以上(sCR+CR+VGPR)を算出し、Clopper-Pearson法により両側正確95%信頼区間を算出した。●コホートAでORR(BICR評価)の帰無仮説が棄却された場合、重要な副次評価項目である、ベースライン時にEMDのない対象症例でのORR(BICR評価)を38%以下とした帰無仮説に対して、ゲートキーピング法を用いて片側有意水準0.025で階層的に検定することとした。コホートAのベースライン時にEMDのない対象症例でORR(BICR評価)の帰無仮説が棄却された場合、重要な副次評価項目である、ベースライン時にEMDを有する対象症例でのORR(BICR評価)を12%以下とした帰無仮説に対して、ゲートキーピング法を用いて片側有意水準0.025で正確二項検定を用い、階層的に検定することとした。●主要評価項目であるコホートAのORR(BICR評価)は中間解析を実施するため、主要評価項目の片側有意水準0.025は最終解析時点では0.0202となっている。●副次評価項目であるPFS(BICR評価)はKaplan-Meier法を用い、3、6、9、12ヵ月時点(以降6ヵ月毎)の奏効持続確率及び3、6、9、12、15、18、24ヵ月時点(以降12ヵ月毎)のイベントフリー確率を対応する両側95%信頼区間とともに推定した。●副次評価項目であるCRRはCR以上(sCR+CR)を算出し、Clopper-Pearson法により両側正確95%信頼区間を算出した(EMD有無別の評価も含む)。●ベースライン時のEMD有無別、R-ISS、5剤の治療に対する抵抗性の有無別のORR(BICR評価)について、サブグループ解析を事前に規定した。
1)Kumar S, et al.:Lancet Oncol 17(8):e328, 2016(PMID:27511158)(著者にファイザー社よりコンサルタント料を受領している者が含まれる)
2)Lee DW, et al.:Biol Blood Marrow Transplant 25(4):625, 2019(PMID:30592986)(著者にファイザー社より研究支援などを受けている者が含まれる)
4. 効能又は効果 再発又は難治性の多発性骨髄腫(標準的な治療が困難な場合に限る)
5. 効能又は効果に関連する注意
5.1 本剤による治療は、免疫調節薬、プロテアソーム阻害剤及び抗CD38モノクローナル抗体製剤を含む少なくとも3つの標準的な治療が無効又は治療後に再発した患者を対象とすること。[17.1.1 参照]
5.2 臨床試験に組み入れられた患者の前治療歴等について、「17. 臨床成績」の項の内容を熟知し、本剤の有効性及び安全性を十分に理解した上で、適応患者の選択を行うこと。[17.1.1 参照]
6. 用法及び用量
通常、成人にはエルラナタマブ(遺伝子組換え)として、1日目に12mg、4日目に32mgを1回皮下投与する。8日目以降は1回76mgを1週間間隔で皮下投与する。なお、24週間以上投与し、奏効が認められている場合は、投与間隔を2週間間隔とすること。
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